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▼GTAサンアンドレアスの発売は? 早くも3回目となったこのシリーズ。今回もBIGLOBE中津君との会話からお伝えします。
中津:お店見てきましたよー。確かに、ちょっとだけZの棚ができてました。でも今は、めぼしいソフトでZなものはないんで、あんまり関係ない印象でした。
橘:そうだね。今回Zとされた23のソフトはほとんどが発売後1年以上経過しているもので、新品はもうあまり流通してないのが実情。新レーティングの販売自主規制が実際に機能するのか、問題ないかチェックできるのは、将来なんらかの人気ソフトがZとされて発売されるときになると思うよ。
中津:あー、それで最初のとき「グランド・セプト・オート(GTA) サンアンドレアス」の行方がどうとか、言ってたんですね?
橘:そうそう、その通り。GTAサンアンドレアスは、アメリカでは2004年末に発売されたPS2用ソフト。相変わらず暴力表現は満載なんだけど、アメリカでは瞬く間に約600万本というスーパーヒット作なんだ。でも日本では未発売。カプコンが販売権を持っていて一度発売しようとしたのだけど、神奈川県がGTAVを有害図書指定した事に端を発する一連の問題をきっかけに、発売予定から姿を消したままになっているんだ。おそらく社内では日本語版の作成とか、とっくに終わっていると思うよ。
中津:じゃあ、レーティングも新しくなったしGTAサンアンドレアスもZ区分ということで、晴れて発売できるわけですよね。
橘:ところが発売されそうな動きは、今のところ見えてこない。あくまで個人的な予想だけれど、カプコンは企業として最終的に発売を断念すると思うんだ。
中津:え、販売権とかまだ有効なんでしょ!?もったいない。
橘:そうだね、発売すれば日本でも30万は確実だろうから、利益を考えれば売りたいところだろうね。でもそこで、先週指摘した問題が起こる。
中津:社会的に責任の重い上場企業が、"有害"なものを発売していいのか?という話ですね。
橘:そう。確かにGTAシリーズのコンセプトには首を捻りたくなる部分もあるし、現実の街で暴力行為や犯罪行為を行えるあの作品を"有害"とする理屈には、説得力があることも事実。ただ、あくまでゲームの世界のことと理解して楽しむ分には、ヤクザ映画を見るのと一緒で基本的に問題ないことのはず。ところがZが登場し、それを一律に"有害"とされることで、作品自体が登場できなくなるとしたら、これはとても残念なことなんだよね。
中津:でも、秋葉原あたりに行けば、海外版が手に入りますよね?
橘:そりゃそうだけど海外版のPS2も必要だし、普通の人にはハードル高いよね。それに問題はGTAだけのことじゃないんだよね。同じ理屈は全てのゲームに当てはまるんだよ。
▼クリエイターの自由を奪う!? 中津:どういうことですか?
橘:企業の理論としてZソフトを発売しない方針を大手ゲームソフト各社が決める、もしくは内々の合意事項としてしまう可能性があるとは思わない?
中津:確かに有害図書指定されるのは、避けたいですよねぇ。でも、ZとレーティングするのはCEROですし、作ってみないとわからないところもあるんじゃないですかね?
橘:企業としてZは駄目と決めてしまえば、簡単なことだよ。まずZになりそうな企画にOKを出さなければよいし、早い段階からZに該当しそうな暴力表現を変更したり、対象を人間からモンスターにしたりすればいいんだ。
中津:なんか、世知辛いというか、寂しい話ですねー。
橘:ここに「ゲームが面白くなくなる」と最初に言った可能性が潜んでいるんだ。つまり、Zを避けようとすると会社は、ゲーム開発者の自由度を奪う可能性が出てくる。表現に蓋をしてしまうことになりかねないんだ。
中津:つまり大胆なことに挑戦できないってことですかね。
橘:その通り。ものを創る人間にとって表現の自由は大切な権利なんだ。自由な発想、表現があってこそオリジナルの面白いものや、素晴らしいものが生まれてくる。Zの運用を誤り、Z=有害としてしまうことを許し続けると、ゲームクリエイターから表現の自由を奪ってしまうことに繋がりかねない。これはものすごく危険なことだよ。
中津:なんか難しい話ですね。
橘:考えてごらん。面白いもの作ろうと提案しているのに、その作品の良し悪しででなくて、この表現が駄目とかこういう話だから駄目とか、本質とは関係ない部分で否定されてしまう。例えば今キミが楽しんでいるバイオハザード4、とってもよく出来たゲームだけれど、もし今企画から立ち上げようとすると、Zになる可能性があるからと会社から内容や企画の変更を迫られるかもしれない。具体的に言うと、首が飛ぶのは駄目だとか、敵が人間の格好なのはまずいのでもっとモンスターぽくしろとか。
中津:あー、そんなんじゃゲームがだいなしですね……。
橘:そうなったら寂しいことだよね。でもそういう環境になってしまうとやる気のある人、独創性の高い人ほどモチベーションが下がる。そして最後はその会社や業界から去っていくこともある。もの創る人間から表現の自由を奪うことは、その会社や業界全体の活力低下にも繋がりかねないことなんだ。
中津:なるほど。
▼問題はZの運用 橘:もちろん、今まで話したことはこれから考えうる危険性であって、そうはならない可能性も充分ある。だいたいレーティング制度の本質には、ユーザーには作品の内容について情報提供するかわりに、自由に作品を作ってよいという側面を持つもの。表現の自由を担保するための制度でもあるべきなんだ。
中津:じゃあ、そのレーティング制度の開発者にとってよい面が、ちゃんと生かされればいいんですよね。
橘:そうだね。Zの運用は業界にとって大きな問題で、もっと論議すべきだと思うよ。そういう意味では先日、興味深いことがあったんだ。ゲーム業界の団体であるCESA(コンピュータエンターテインメント協会)の会長が交代したんだよ。その交代が新レーティングのスタートとほぼ同じタイミグで、とっても印象的なんだ。
中津:確かバイオハザードやGTAの発売元の、カプコンの社長がCESAの会長でしたよね。ゲームショウで見た気が。
橘:そうカプコンの辻本社長が今年5月に退任して、スクウェア・エニックス(スクエニ)の和田社長が新会長になったんだよ。ちなみにスクエニ作品には、Zソフトは一本もない。
中津:それって、業界としてZはなくする方向に動くという意味ですか?
橘:そういうことじゃない。まあおそらくスクエニがいきなりZソフトを出してくる可能性は少ないだろうけど、和田社長はゲーム業界で販売規制問題に積極的に取り組んできた人なんだ。その彼がCESAの会長就任挨拶で抱負として語ったのが「開発者がものを創る環境の整備」と「社会との健全なコミュニケーション」。
中津:具体的には何をやるんですかね?
橘:詳しくはこれから。でも、和田新会長の抱負は業界としてとても大事なこと。ゲーム業界が長く放置してきた問題に適切に取り組もうとしているのなら、それは評価すべきことと言えるだろうね。次は、ゲームの有害図書指定やバッシング報道に陰に見えるゲーム業界の問題点について話そうか?
中津:はい。ま、こうなったらとことんやりましょう。
<お知らせ> テレビゲームの有害図書指定に始まりZ区分のスタートまでの一連の動きを、「CONTINUE」(太田出版)でシリーズ「ゲームと暴力表現」として連載しました。昨年発売の25号より先月の28号まで4回にわたる掲載で、このテーマを継続して取材、掲載したものです。興味をお持ちの方は是非ご覧下さい。
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