橘寛基の『ブログ de Gamersta!』

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help リーダーに追加 RSS ▼ 第76回 ゲームバッシングの陰には?【ゲーム販売規制再入門 その4】

<<   作成日時 : 2006/07/30 03:04   >>

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▼「ゲーム=有害」の根拠とは……?

 シリーズでお伝えしているゲーム販売規制のお話。今回も中津君との会話から、規制の背景をお伝えしたい。

中津:「そもそもゲームが有害だとか、青少年に悪影響を与えるとか、何か根拠があるんですかねぇ?」

橘:「これはとても簡単なようで奥の深い問題なんだよね。まずゲームもテレビや映画、本といったメディアのひとつ、つまり人に情報とか物語とか何かを伝える媒体のひとつといえるよね」

中津:「えぇ、そうですね。」

橘:「そうであるならば、人に何らかの影響を与える可能性は当然ある。早い話、小説を読んだり映画を見たりして、感動したり影響されたりすることがあるのと同じように、ゲームにも人を感化する力があるはずなんだ」

中津:「そりゃ、そうですよ。僕、今でこそ泣きはしませんけど、昔マザーで涙流して感動しましたから」

橘:「中津君にしてはいい趣味だね。個人的にはマザーは2の方が好きだけど」

中津:「“中津君にしては”って、どういう意味ですか?でも一応誉め言葉として受け取っておきます」

橘:「ま、だから広い意味で、ゲームも人に影響を与えるメディアであることは間違いない。ここまではほとんど異論がないことだよね。問題はその影響にはよいものも悪いものもあるとして、どうして悪影響ばかりがクローズアップされるかということ」

中津:「ほら、おそらく役所の人とか規制する側の偉い人は世代的にゲームとか知らないから、それで良い見方されないんじゃないですかね?」

橘:「確かにそういう面もあるだろうね。新しいメディアが登場し子どもや若者が夢中になると、古い世代から敵視される傾向は常にある。テレビ、マンガ、そしてゲーム。『テレビばっかり見てないで勉強しなさい』『マンガばっかり読んでないで…』『ゲームばっかりしてないで…』とお母さんに怒られる。子どもがそれに夢中になって勉強や他の事をしない、だから悪いものだ、これが有害論のスタートに一番なりやすい」

中津:「じゃあ今回のゲーム規制も、次のターゲットが現われれば下火になるってことですかね?」

橘:「現実に既に、ゲームよりインターネットの方を問題視する傾向がある。でもそれでゲームバッシングが止むかというと、ちょっと違う要素があるんだ」

中津:「ん?それはゲームは今までのメディアと違うってことですか?」

橘:「ひとつはその通り。このシリーズの1回目でも少し書いたけど、ゲームの持つ双方向性、つまりキャラクターを自分で操作して敵を倒したりすることと、長時間に渡ってプレイすることが多いこと。このことから、単に見る、読むだけの今までのメディアより感情の移入度合いが高くなって、それが暴力的な作品の場合、プレイヤーにもその影響が強く現れるというもの」

中津:「確かに2時間で終わる映画と、何十時間もキャラクターを操作するゲームとでは、影響の受け方も違うというのはわかるような気もしますけど……感動したりするのは時間とかそういうものだけじゃないんじゃないですかね?短くても泣ける映画はあるし、長くてもつまらないものもあるじゃないですか」

橘:「そうだね。ゲームの影響度が高いというのは、科学的に因果関係づけられたものではないし、まあゲームに限らず本でも映画でも、どういうものを面白いと思い、どういう作品のどういうところに影響を受けるかは、結局は人それぞれ違うこと。一概には言えない。でも、これは説得力のある理屈で否定する証拠もない」

中津:「そういう研究とか進んでいないんですか?」

橘:「日本はテレビゲーム産業では先進国なんだけど、こと研究に関してはかなり遅れているのが現実なんだ。このこともゲームバッシングの背景にあることのひとつと思うよ」

中津:「ん!?どうしてですか?」





▼ゲームは文化ではない……?

橘:「ま、結局は長い間、玩具の一部と思われてきたからだろうね。大人の娯楽、文化として捉えられてこなかった。アメリカや韓国ではゲームはコンピュータ産業、IT産業の一部と捉えていることとは対象的だね。アメリカでは90年代からゲームの影響とか、研究してる事例がたくさんあるんだけど、残念ながら日本では学術的にゲームを研究している人は数少ない」

中津:「でも最近はデジタルゲーム学会とか設立されてますよね」

橘:「よく知ってるね」

中津:「へへ、コンティニュー読みました」

橘:「おー、ありがとう。で、この学会には個人的にもすごく期待しているんだけど、東京大学の馬場章教授らが中心となって設立されたんだ。でも馬場先生も以前は先輩や周りの人から、ゲームを研究することに随分反対されたらしいんだ。教室を借りるのも大変だったらしいよ」

中津:「経済産業省もゲーム産業戦略研究会とかやってますよね?」

橘:「おー勉強してるね。今年の4月から始まったんだ。ゲーム開発者の資格認定とかやるみたいだけど、正直言えば10年前からちゃんと取り組むべきことを、やっと始めたという印象。ま、これも今後に期待なんだけど、実はその研究会でゲーム産業の課題としていることにすごく面白い内容がある。これが三つ目のパッシングの背景でもあるので、ちょっと抜粋するね」


経済産業省ゲーム産業戦略会議 配布資料より
ゲーム産業戦略骨子 平成18年7月20日 
3章ゲーム産業の現状と課題 
2.ゲーム産業の課題

(3)社会との良好な関係の構築 (一部抜粋)
○社会にエンターテイメントを提供しているという役割を担っているにもかかわらず、社会ではそれに見合った評価を受けておらず、これがビジネス、人材確保等に支障を来たしている。
○青少年健全育成など社会との良好な関係の構築に向けたゲーム産業側の取り組みは不十分である。



中津:「これって前回聞いた、スクエニの和田社長がCESA会長就任の抱負とした『社会との健全なコミュニケーション』ってことと同じですか?」

橘:「その通り。早い話世間からちゃんとした産業として認められてないし、業界の努力も足りないってことが、産業の課題になっている。ちなみにこの研究会にはその和田社長や、前出の馬場教授も委員として参加しているんだ」

中津:「うーん……でもゲーム会社って結構人気企業のとこもありますし、そんな世間で認められてない気もしないんですけど……」

橘:「まあ中津君くらいの世代はそうだろうね。でも上の世代の見方は結構厳しいよ。例えばGTA3を有害図書指定した神奈川県のある県議は、児童福祉審議会でゲーム業界団体を指して『良心のかけらもない団体』とまで発言している」

中津:「なんでそこまで言われなくちゃならないんですかね?」

橘:「何を根拠に言っているのかわからないし、神奈川県のホームページで閲覧できる議事録上は、そういう言い方なんだけど、実際にはもっとひどい、議員がれっきとした団体に対して使う言葉とは思えないような発言だったという情報もある。そうでなくても酷い言い様だね。でも、あえて誤解を恐れずに言うと、その県議の発言を全否定できない部分もあるんだ」

中津:「え!?」



橘:「ゲームバッシングにはいろんな背景があるけれど、『コンピュータゲーム』というエンターテインメントを文化としてどう理解してもらうか、業界としての対応には疑問符を付けざるを得ない部分がある。詳しくは次回ね」

中津:「はい!キーワードは文化ですね」







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